「ライ!この近くに傷を癒す効能のある、泉があるはずだ!行こう。」
ライは痛む傷に耐えながらコノエに体重を預けるように立つとゆっくりと歩き出した。
ぼたぼたっ…
(!?)
歩くたびに腕に追った傷口から血が流れる。
(泣いたりしたらダメだ。俺がしっかりしなくちゃ…絶対にライを助けるんだ。)
その気持ちが好を相したのか、珍しくコノエは道を迷う事なく泉へたどり着く事が出来た。
「…………っ」
ライはあれから一言も話していない。荒い息をただ繰り返しているだけだった。
(顔色が悪くなってきている。早く泉の中へ…)
焦る気持ちからか、闘牙を失うかもしれない恐怖からか、装備を解くコノエの手が震える。
やっとの思いでライの装備を解き終わると、コノエは自分の服が濡れるのも構わず、ライを抱えて泉の中へ入る。
ライを抱えながらコノエは少しでもライの苦痛が和らぐように唄を唄い続けた。
「……っ」
気がつくと辺りは陽の月が落ち始めていてオレンジ色に染まっていた。
唄を唄い続けたせいか、コノエの体は思ったよりも疲弊していた。